高谷 VS 北村 vol.6



北村  あのう、高谷さん…

高谷  どうした北村。

北村  ちよっと胃腸の調子が良くないんですけど。

高谷  えっ?嘘だろう。

北村  わたし嘘言いません。

高谷  まあ、浴びるほど飲めばな…

北村  なんですか?あびるって?

高谷  いやザルだもんなビールは。

北村  猿ってなんですか、年頃の娘に向かって。

高谷  いやビールのザル、あっいやゴメン。

北村  本当にもう。ですから今日は帰って脚本を読みます。

高谷  それは良い考えだ。稽古がね、逆転したら駄目なんだから。

北村  逆転?

高谷  よくあるだろう。飲むために稽古に来るというような劇団とか役者。

北村  それは分かりますよ。私はそんなことないでしょ。

高谷  ないよな。で?どうなんだ今回は?

北村  はい?

高谷  役だよ。今回の役。

北村  あゝ、そのことですか? 難しいですね。男役ともう一つは正反対の御嬢さん役でしょ。

高谷  まあ、御嬢さんと言ってもな、したたかな役どころだからな。

北村  それなんですよ。私したたかな処って無いじゃないですか。御婆日傘で育ってきたので。

高谷  オンバヒガサ?

北村  言ったじゃないですか、高谷さん私の事、御婆日傘で育ったって。

高谷  言ったかなそんな事? なんかの間違いじゃないか。

北村  ひどい。始まりましたね。

高谷  何が?

北村  健忘症ですよ。帰ります。

高谷  おい、ちよっとまてよ。あゝ……